二百三高地(舛田利雄)★★★
2020/2/1 鑑賞
これからこの映画観る人に言っておきます。
長いよ。。。
なっがいよーーーー!!
これ、上映された当時はインド映画みたいに途中休憩入ったんじゃないかと思うほど。
というのも、映画の真ん中ですごいものが流れるから。。。
ネタバレ・・・というか・・・
そう、この映画の主題歌、さだまさしが歌う「防人の歌」が大音量で流れ、黒字の画面に黄色の文字で歌詞が延々流れるのだ!!
海は死にますか
山は死にますか
風はどうですか
空もそうですか
さだまさしの悲壮感たっぷりの歌声と共に歌詞が延々流れる。
度肝を抜かれる。
で、後半が始まる。
この映画でやっぱりすごいなと思ったのは伊藤博文役の森繁久彌の演技。
ずっと見てられる。
たまにBSで森繁の社長シリーズの映画やってると思わず見入ってしまうしね。
あと丹波哲郎、死後の世界の人としか認識しておらず、丹波さんが俳優やっているのちゃんと見たの初めてかも。
大物俳優たちが軍法会議みたいなのやってるんだけど、ああ本当にこんな感じだったろうな、というかこんな感じじゃなくてもこの大物俳優たちが集って演じている貴重な映像だなとしみじみ思う。
あおい輝彦、スケキヨといいこの時代の若いいい俳優だったのか、重要な映画に出ているじゃないか。
乃木将軍を演じる仲代達也は、詩の朗読をしている名俳優という感じだった。乃木将軍がそういう人だったのかな。
相当な時間とお金をかけて作ったであろうこの映画、全部入れたいのはわかるけど、もう戦場のシーンが長くて長くて。
しかもゴレンジャーの戦闘シーンのような爆発音、爆撃シーン、血の色は朱肉の色。
当時は最新だったのかもしれない。
でも現代のハリウッド最新の戦闘シーンを見慣れている者にとっては、最初は物珍しくて面白いけど、繰り返し投入される粗末な戦場の風景に、もういいです、お腹いっぱいです、勘弁してくださいと許しを請う羽目になる。
最後までもうしつこいしつこい映画だから、戦闘シーンはもうちょい短くてよかった。
(本当にそう感じる戦争だったということなのかも。)
ヒロインの夏目雅子、現代に通用する美貌。
しかしまだ演技は上手くないきがするんだけど、助演女優賞獲った模様。
朴訥な新人市民兵のニーヌ・マッケンジー(新沼謙治)が可愛い。
明治天皇役の三船敏郎、え?これがあのエネルギー爆発の多襄丸?同じ人?
と思うほど全然魅力のない、しじみエキスが二日酔いに効くとインタビューで答えている風の健康食品CMのぬるい二枚目おじさん俳優のよう・・・。
長いけど、本当に長いけど、
1980年(昭和55年)の日本映画の全力を観ることができるという貴重な映画。
今、令和の時代でやるなら・・・という楽しい妄想ができるという側面もある。
当時ビートたけしさんが二百三高地とさかんに言っていた気がするけど、ドラマ版に出ていたのね、たけちゃん。
ザ・メイヤー 特別市民(パク・インジェ)★★☆
2020/1/30 鑑賞
これも観てからだいぶ経ってしまい、どういう結末か忘れしまったため、ネタバレ検索をした次第。
チェ・ミンシクの顔面力で乗り切った映画であるため、ストーリーがあまり残ってこない。
豪華弁当を食うチェミンシク、人を車でひいて焦って逃げるチェミンシク、納豆を頬張るチェミンシクはどんどん浮かんでくるんだけど!
あと変態的にピカピカ靴を愛するクァク・ドウォンも。
チェ・ミンシクとかソ・ガンホとか岩みたいな顔の韓国俳優って、スクリーン映えする。
映画に重厚感出て、ベルリン、カンヌ、ベネツィアの三大映画祭で賞獲りそうな良い映画なんじゃないか?という気にさせられる。
それをもってしても星2.5!
なんか意外性もないしガツンとくるものもなく。
韓国の選挙ってスタッフが揃いのジャンパー着てダンス踊るのよね。
あれ何の効果があるのといつも思っていた。
ダンスがうまいと投票されるのか?
犬神家の一族(市川崑)★★★★
2020/1/24 鑑賞
犬神家の一族と言えば、佐清(スケキヨ)のゴムマスクと、湖からにょっきり二本足の逆さ遺体、と誰しも幼き頃から記憶に深く刻み込まれているものだ。
しかし、すっかり年を重ねて観たこの映画、
のっけからすんごい面白いの!
犬神家のじーさんの最期を、莫大な遺産にしか興味が無い一族たちが取り囲んで、早く!死ぬ前に遺言ください!と詰め寄るとこから始まる!いきなり!
話が早いぜ!
まあ一族たちがそんなに無情に冷酷になれてしまうほどの仕打ちをしてきたんだろ、じーさん。
そして瀕死のじーさんがふるえる指で指し示す「あいつに遺言託してある」のサイン!
すっごいな!コントだ!超豪華な格式高い重厚感たっぷりの!
その後、遺産をめぐって連続殺人事件が起こっていく・・・金田一全然抑止できないよ!
先日の「羅生門」といい、昔の邦画って面白いんだな~と改めて思った。
俳優たちの演技がすごいんだもの。
上手い下手というのを超えて、なんっか面白いんだよね。
人間的魅力がにじみ出るのか?ずっと見ていたい。
そして、そうだそうだ金田一耕介って重苦しい事件の中、飄々としてて軽い奴だったなあと思い出してくる、若い石坂浩二。
この映画の豪華俳優陣の中で一番存在感あって心に残ったのは、やっぱりこの人、高峰三枝子。
そう、でかい御釈迦様。THE女優だわ。(西遊記大好きだもんな)
この映画のど真ん中にどっしり鎮座しておられる。
この人の作品色々みたい。
美しすぎる島田陽子、瑞々しい可愛さ爆発の坂口良子も見逃せない。
ストーリーは入り組んでいるし、説明は早いしで、子どもが理解するのは難しい映画だった。(トリックは全然入り組んでいない簡単なものだけど)
まさか衆道(男色)が事件に関係しているなんて、子どもの頃観たときは思いもしなかった。
子どもの頃感じた不気味さおどろおどろしさが、今観たらそのあまりにコントチックに見えて(三姉妹が愛人の家に三種の神器取り返しに行くときの白塗り!恐ろしい。。。青沼静馬にはそう見えていた、ということか?)、それが面白くて上質のエンターテイメントという感じ。
劇中流れるジャジーな音楽、なにこれ、まんまルパン三世やん!!!
と驚いていたら、音楽担当同じ人だった!
音楽担当:大野雄二 - Wikipedia
いやあ面白かったなあ。良い映画再発見。movies.yahoo.co.jp
そうそう、佐清、マスクの中の目の周り黒く縁取りすんなよ!怖いだろ!
セールスマン(アスガー・ファルハディ)★★★
2020/1/24 鑑賞
2017年のアカデミー賞外国映画賞を受賞したとのことで、鑑賞。
イランのセールスマンの話かなと思ったら
セールスマンは全く出てこない。
「セールスマンの死」というアーサー・ミラーの有名な戯曲を、舞台俳優である夫婦が演じる。
この「セールスマンの死」を知っているかいないかでこの映画の見方が変わるのかな?
私はもちろん知らないんだけども・・・。
集合住宅が崩壊するシーンから始まるのだけど、まずイランのことも何も知らないので、こういうのがイランの日常なのかな?と想像しながら観始める。
主人公の男は学校の先生をしていて、男子生徒達とすごく気さくに接するのも、イランってこうなの?と疑問を持ちつつ。
男は舞台俳優でもあるので、イランって舞台俳優が学校の先生したりするの?と。
そもそもこの舞台というのはイランの中での文化的位置づけはどういうものなのか。
市民が集って演じているようにも見えるが、そういうシステムなのかい?
そんな数々のイランへの疑問を抱きつつ観続ける。
なんとなく予想はしていたが、全体的に重苦しい沈んだトーンで話が進んでいくタイプの映画。
妻が暴行されるシーンも直截的には描かれておらず、妻もギャーギャー泣き叫ぶこともなく、静かに深く傷ついている様子で、劇中劇もなんだかんだうまく進まず流れが悪いから、退屈で寝てしまう・・・
と思いきや全然寝なかった。
最後までじっくり観てしまった。
ミステリーだからまあ意外な事実をつきつけられるっちゃつきつけられる。
でもどうなるの?どうなるの??っと心逸らせられるほどではない。
なのに!なんで最後まで寝ずに観られたんだろう。
・・・という不思議な映画だった。
そこを解明するほどまでには惹きつけられるものがなかったんだ・・・。
ネタバレ
妻に暴行をはたらいたじーさんの夫婦が、お互いを信頼しあって助け合っていて、被害者夫婦よりよっぽど理想的な関係だったという皮肉なお話だった。
冷たい女は嘘をつく(イ・オンヒ)★★
2020/1/23 鑑賞
仕事超忙しいシングルマザーの幼い娘が、謎の中国人ベビーシッターと消えてしまい、探しているうちに色々わかるというミステリー。
韓国ドラマ、映画をよく観ている自分からしたら有名俳優たくさん出ているし、まあ謎は知りたいしで最後まで観た。
中国人ベビーシッターを演じたコン・ヒョジンは、変わった顔しているのにラブコメ女優としてすごく人気がある。おしゃれ代表みたいな扱い。
まあスタイルはものすごくいいんだけど、全然色気ない。
コン・ヒョジンに色気があったら、もっと韓国映画特有のジトジト悲惨な作品になってたんだろうか。
途中売春宿みたいなところが出て来るけど、結構さっぱりしてるし。
そんなシーン、キム・ギドクやらパク・チャヌクが撮ったらえげつない社会の底辺感見せつけてくるよ。
色気ないからいいのかこの映画は。
その売春宿みたいなとこの女店主役のキム・ソニョン、寄せまくった乳がでかかった。
痩せてるっぽいのに驚いた。
映画じゃなくてドラマでいいような感じかな。
ワンライン/5人の詐欺師たち(ヤン・ギョンモ)★★☆
2020/1/21 鑑賞
映画やドラマで観たことある俳優がたくさん出ていて豪華な映画。
アイドルのシワン君が主演だけど、ドラマ「ミセン」のチャン・グレというとんでもない当たり役を持っているから、そしてミセンにどハマりした自分としては、チャン・グレにしか見えない・・・。
チャン・グレのこと、親戚のおばさん目線で応援しているからなあ。。。
ストーリーはちょっとした騙し合いが入ったスピーディなお話。
といってもあの時のアレがこうなって、アイツがあれでなんやかや、というのは浅いので、最後うわーっお見事っていうのはありません。
そして結構音楽の効果が大きい。
こういう詐欺トリック系の映画の音楽はもう全部オーシャンズシリーズに似たものになってしまうんだろうなあ。
あの音楽ほんとワクワクするから。
詐欺トリック系音楽とちょっとしゃれたストーリーと演技の達者な有名俳優たちで最後まで引っ張ってみました、という映画。
チン・グが出てるとなんか良い映画って感じするから。
もう一人、いっつもジャンクフード食べてるオタクデブの、しかし腕は確かな仲間がほしい。
ユチョンの弟ではちょっと弱い。意外にうまかったけど。
イ・ドンフィは敵でも味方でもコミカルにいけるってすごい。
パク・ビョンウン、誰かに似てるとずっと思っていたけど、それが佐々木蔵之介であることにこの映画で気付いた。ありがとう。
でもまあ、ちょっとマジメには観なかったから。
そういう意味では、途中でマジメに観よう、という気にはならなかった。
羅生門(黒澤明)★★★★★!!
2020/1/21 鑑賞
いやあ・・・しびれた。。。
羅生門、観るのは三回目だけどこんなにすごい映画だったとは!
一回目は大学の授業で(日本文学科だったので)、二回目は10年以上前の東京国際映画祭で(ジョン・ボイドがゲストで来た)、そして昨日アマプラで三回目の鑑賞。
映像、ストーリー、音楽、俳優の演技、全部が私の好みで最高得点で自分の中の映画鑑賞パートがしびれながら喜んでいる。
この映画のすべてが好きです、という自己紹介になる映画。
三度目にしてこの素晴らしさに気づくとは、なんと年を取ったんだろう(いや、いいことだ!)。
映像の1カット1カット(というの?)がすべて絵画のようでむっちゃくちゃカッコいい!構図がすごい!言葉で表せないよ!
観てるだけで自分の視覚部門が喜んでいるんだ!
どのシーンも全部好きだけど、特にここ!
検非違使(現代の警察と裁判所を兼ねたようなところ)に山の中で起きた事件について証言している「藪の中」の例のシーン、後ろにいる杣(そま)売りと旅法師。
なんだよこの構図!最高かよ!
たまにこの二人に焦点が合うような合わないような、表情が読み取れる時があって、楽しい、面白い。
あと強く印象に残っているのは(全部残ってるんだけど!)
女が証言し始めて藪の中のシーンから戻ってきたら、それまで美しくしとしと泣いていた女が髪も着物も乱れてやさぐれちゃってるシーン。いいわあ。
殺された武士の口寄せを行う巫女が、祈祷(?)により強風吹きすさぶ中、全然瞬きしない不気味なシーン。黒澤明にまばたきするなと言われたんだろうなと。
それで声は武士の声が被ってて、その声の粗さもあいまって余計に怖い。
出ている俳優全部すごいよ!
三船敏郎の若いエネルギーが爆発していて演技面白い!
京マチ子、ふくふくとした日本美女で芯がしっかりしてて気が強くて、終盤キレて狂ったように笑ってて、多襄丸も武士の旦那も引いてたよ!
狐が憑いたみたいな演技だった。すっごく性悪の女狐ね。
音楽も終始不穏な空気を漂わせていて白黒の映像にあっててカッコいいの!
白黒映像は、自由に自分の中で色付けできるから、羅生門にしてもかすれきった緋色にしてもいいし、海の底みたいな沈んだ藍色にしてもいい。
自分の好きな世界が作られるという余白を残してくれる。
ストーリーはもちろん藪の中だから面白い。
なにより絶対映画で寝る私が寝なかった(88分という短さもあるけど)。
これは世界のクロサワになるわ。
タランティーノがオマージュ捧げまくりたくなるわ。
死ぬまでにあと三回は観たい。